【存在の必要について】   タイトルお題: Cock Ro:bin さま




四分の一日待ってみーくんが屋上に来なかった時点で、そーなんかなーとは思ってた。
うん。 死んじゃったんだろーなーって。
多分どっか、両親どころか俺やサユにだって見つけらんないとこで。
俺やサユにだって見つけらんないとこでも、もしかしたらサユはみーくんを見つけるのかもしんないけど、そのサユはもういないからやっぱりみーくんは見つからないんだろう。 そう思った。


みーくんのアパートに引き返したら(鍵は勿論閉まっていたから開けて入った)、俺が寝かせた時のまんまの状態でサユがベッドの上に居た。
抱き上げる。
シゴコーチョクしている身体はうまくお姫様抱っこされてくれなくて、なんだか凄く不自然な形になった。
でもまあいーやあ。
そのままアパートの外に出る。
酔っ払ったおじさんが訝しげな視線を送って来たから、「大事な人なんです、可愛いっしょ?」とだけ言ってあげた。
見るからにサユは生きていないんだけど、おじさんはポカンとしているだけだった。
まあね、まさかデショ。
フツーに死体抱えて歩いてる二十そこそこの男なんてさ。


大学の屋上まで戻ると、俺はコンクリートの床にサユを横たえた。
ちょびっとだけ急がないと、もしかしたらさっきのおじさんが警察とか呼んじゃったかもしんない。
この季節にまだストーブを出したまま放置している教室に心当たりがあったから、灯油を拝借して来てサユにぶっかける。
髪までびしょびしょに濡れたサユは結構なエロさでありましたけれども、俺はしっかりと我慢を致しまして、財布に入ってたレシートにライターで火を点けた。
それをサユの上に放れば、じわじわと赤い炎が広がってゆく。
第一ね、死姦すんなら殺した時点でやってるっつーのよ。
ああ、それにしても。


―――サユ、きれーだな。


この世界できっとサユだけが俺の目に綺麗に映る。
そんな唯一の人を、失いたくなくて自らの手で殺めた。
矛盾?してねーよ。
サユの最期の表情を見たのも、声を聴いたのも、温もりを感じたのも、匂いを嗅いだのも、唇を味わったのも俺だ。
五感全てで記憶した。 一生、忘れない。
俺の中でサユは、まっさらなまま永遠になった。
これ以上望むことなんて何もないね。


サユ自身を必要としたのはみーくんで、サユの持つ特別さに縋ったのは俺だ。
だからみーくんは生きる意味を失ったし、俺にとってはこの世界が意味あるものに変わった。
どうせどっちもエゴイストならさ、俺もみーくんみたいにサユを愛せたらよかったよね。
今更言ってもショーガナイか。


あーやっぱよええなー、火力。

本当は誰の目にももう映らないよう灰すら残さず昇華させてしまいたかったけれど、不可能なのはわかりきってた。
それでもこれが、火葬すんのが一番相応しいと思うんだ。
なんかさ、大気に消えたら風に乗って好きなところへ飛んで行けそうな気がしない?
はは、ロマンチック過ぎて笑えンね。
でもさ、それでも願うよ。
サユがみーくんを見つけてくれますよーに。
そんで今度こそ、俺なんかに邪魔されずシアワセになれたらいい。


幸せになれたらいい。